化学療法グループ
Chemotherapy
消化器癌化学療法グループ(化療グループ)は、食道癌、胃癌、大腸癌、膵癌、GIST等を主とした消化器癌に対する薬物療法治療・臨床試験の立案・実施による臨床研究を行っている。
グループメンバー
グループ長
メンバー
医員・大学院生(3)
中村 赳晶
医員・大学院生(2)
金子 志帆
医員・大学院生(2)
石田 浩一
グループの業務
当グループでは、食道・胃・大腸、胆道、膵臓の各種進行癌、GIST等、消化器の悪性疾患に対する薬物療法を中心としたがん診療・研究を行っている。各種臨床試験・治験治療はもちろんのこと、治療難渋例についても、消化管キャンサーボードにおいて、放射線科、外科、病理、など、他科スタッフとの連携を密にし、多職種で相談した上で、患者さんに最良の治療を 提供できるよう、集学的治療を含めた最新の標準治療・治験治療等を行っている。
食道癌については、切除可能食道癌に対する術前化学療法の実施のみならず、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む多剤併用薬物療法や化学放射線併用療法(CRT)を積極的に実施している。また、新治療開発のための企業治験には積極的に参加し開発に協力している。研究としては、食道患者における口腔内ならびに腸内細菌叢についての研究が進行中である。
胃癌については、複数の国際治験に参加しており、それらへ参加を通じて最新の進行胃癌診療の開発に関わっている。新標準治療へ独自の関わりとしては、胃癌2次治療におけるIrinotecanとRamの併用臨床試験を終え論文化ができた。同時に胃癌ガイドラインにも掲載されるようにもなり胃癌診療に寄与できたものと思われる。同様に新しい2次治療の開発としてDocetaxel+Ramcirumabの臨床試験、また転移症例に対するICIと放射線の併用研究も進行中であり、将来の標準治療となる治療法開発のため研究を続けている。
大腸癌領域については、当Gが中心となり開発したIRIS+BV療法が、ESMOガイドライン掲載に続いて、本邦においても正式な大腸癌1次治療として大腸癌治療ガイドライン掲載された。北海道から世界へのEBM発信という当Gの目的が形になったものである。その他世界で話題となる各種臨床試験、治験等にも積極的に関わっており、世界トップレベルの診療を実践できていると自負している。
胆膵領域においては、JCOG胆膵Gやその他の研究施設として参加しており、積極的に活動している。膵癌では当GオリジナルOXIRISのPhase II試験の登録も終了しその解析が待たれる。その他、胆道癌でも、新薬治験を多数引き受けるようになり、この領域でも他施設をリードしていく立場を目指したいと考えている。最近では川本医師がAMED資金を取り、班長となり進行膵癌に対するNiraparibの開発治験にて他施設と協力して登録集積中である。
稀少疾患としては、特に消化管間質腫瘍(GIST)診療に関わっており、その担当患者も北海道では最も多い患者数の診療をしている。治療においても、今まで開発されてきた全ての分子標的薬の開発に携わってきており、最新薬剤が最も早期に使える施設の中の一つと言える。こちらも診療ガイドライン作成にも積極的に協力している。
手技の経験・教育としては、当Gにおいて化学療法や栄養療法の実践のために必須の手技である中心静脈ポート造設を多数実施しているため、外科、放射線科などの専門科での研修をせずとも、当グループにおいて、早期にリザーバー留置法を研修し、術者となることが可能となっている。また、積極的に各種学会での発表などにも参加してもらっており、国際学会の経験も必ずできるようなシステムになっている。
グループの理念
年変わる事は無いが、癌化学療法・薬物療法を専門とするGIオンコロジストを多数育成し、北海道全体にトップクラスのスタッフを当Gより輩出し、各施設にて世界レベルの適切な標準的癌薬物療法を実施できるように全道施設のレベルを底上げすることである。また、がんの標準レジメン、新しい支持療法などの開発に関わり、北海道から全国に、そして世界に向けて、オリジナルのエビデンスを発信し、その実践により社会に貢献することである。
最後に
当グループは、国立がん研究センター東病院、中央病院、各種がん関連施設など、癌治療における第一線の施設との交流が深く、人的交流、会議・勉強会からの還元や、国際学会への積極的な参加等で常に最新の情報を得る事が可能である。もちろん、上記の施設へレジデントとして国内留学をすることも相談可能である。Tricolore研究にてIRIS+BVを開発し、世界標準治療にまで押し上げることに成功しガイドラインを書き換えるということを達成し得た事は上述した。大腸癌の世界標準治療に日本で開発された治療が掲載されることは稀であり、現状では本法だけであると思われる。またHERBIS1試験というOGSGなど他グループとのintergroup研究も成し遂げ、SP+Herceptinという胃癌1次治療のオプション開発も報告し、胃癌ガイドラインにも関わる事ができた。当グループの特徴として、卒業後も変わること無く、真のoncologistをめざし大学メンバーと卒業メンバーが切磋琢磨しながら、最新がん診療を進める事ができることであり、当Gの楽しみであり強みでもあると考えている。当グループを中心としたHGCSG、HOPE、HOMEには、当科関連施設はもちろん、全国の協力施設も含めた多数の施設が参加しており、多施設共同の臨床試験を行っている。 また、定期的なmeetingや講演会を通じ、当グループの得た最新の情報を共有することで関連施設全体の癌治療を高いレベルに維持する一助となることを目標としている。 最近では、北海道という広大な土地でのメンバーの意思疎通を密にするために、独自のweb会議システムを導入し、さらなる標準的治療開発を進めるべく動き出している。
上述の如く、当Gは、自グループの臨床試験結果が複数の国際学会、国内学会において報告され、ガイドラインを変えるような結果を世に出すなど極めて高度なレベルにあるものと自負している。また、当化療グループの大きな特徴として多くの新薬治験や臨床試験への参加を積極的に実践しており、それらに参加することで、標準治療のみならず、治験治療をも一つの戦略・新治療として患者さんの治療計画に組み込んだ、最新の医療計画が実施可能となっており、メンバーへの豊富な経験の蓄積のみならず患者さんにも貢献できているものと考えている。
上記の如くですが、癌化学療法グループは、癌治療のスペシャリスト、GI Oncologistを目指す皆さんの参加を心よりお待ちしております。
文責:小松 嘉人(2022年6月)
化学療法グループ紹介
前化療Gグループ長の小松は、北大病院腫瘍センター化学療法部・キャンサーボード部・部長/診療教授として当科のみならず当院全体のがん関連診療業務・がん拠点病院連携・キャンサーボード等の運営、各種委員会等に広く関わって活動している。グループ長を次代に引き継いだ後も、そのサポートをしながら担当科での診療は継続している。その一方で地域がん診療グループとしてのHGCSG(北海道消化器癌化学療法研究会) の活動に続き、緩和医療との融合を狙ったHOME、 支持療法の臨床研究グループであるHOPEの代表責任者も兼任し、研究予算集めから新研究の発案・実施までを統括・管理している。引き続き、北海道から世界標準治療を作り発信することを推進したい。診療担当は、消化器癌全てにわたっているがGIST患者が多いのが特徴的である。
現化療グループ長である消化器内科助教の結城敏志医師は、外来業務はもちろんのこと、治験・各種臨床試験での、各種マネージメントの実務担当責任者を務め、厳しく目を光らせてくれている。教育の面でも、病棟診療におけるグループスタッフ、研修医、学生への指導にも尽力してくれている。 また各種臨床試験をマネージメントする傍ら、各種学会等においても積極的に活動し、国内外の学会で、積極的に発表している。取り組んで来たU-Kit projectも、その結果を報告する時期に来ており論文化などが楽しみである。臨床・研究で忙しい日々を送るとともに、EPOCや道内の関連協力施設と密接な連絡をとりながら着実に登録を進めてくれている。診療担当は、消化器癌全てであるが、主に大腸癌患者を多く担当している。
川本泰之医師は、国立がんセンター東病院での国内留学時に得た様々な知識や経験を生かして、化療外来、消化器内科病棟・化療グループのがん診療に関わってくれている。現在では腫瘍センター助教として、腫瘍センター全般のマネージメントもしてくれている。各部署の医療スタッフに対する教育などにも力を注ぐとともに、北大病院のがん治療全般、当科研修医、学生の教育までも兼務する立場となった。グループの各種研究のマネージメントもしてくれており、治験や臨床試験などグループリサーチのまとめ役をしてくれている。診療担当は、消化器癌全てであるが、主に胆膵癌患者を多く担当している。難治癌である胆膵患者を多数担当しており日々奮闘している。また消化器内科副医局長も兼務し、忙しさも増えたががんばっている。
原田一顕医師は、消化器内科助教として、グループの若手医師、学生などの指導をしっかりとやってくれている。今やグループ全体のあらゆる業務をサポートしがんばってくれている。国内留学の国立がん研究センター東病院で得たがん専門知識と地域の基幹病院での経験を生かして、大学中心で実施中の各種臨床試験に深く関与し、その連絡やまとめにも尽力してくれている。診療は進行消化器癌全般であるが食道癌・胃癌患者さんを多く診療してくれている。若手教官として大学院医員の先生の良き相談者としての役割も大きい。
山村貴洋先生は、大学院医員として、病棟診療の直接的な要となる存在となっている。地方勤務の時から大学と積極的に関わり今に至っている。今年は大学院4年目でもあり、研究の総まとめである論文化と学位取得に向けての準備で大忙しになるものと思われるが、ぜひ全うできるようがんばって頂きたい。趣味は温泉廻りで休みの日は良質な泉質を求めて放浪しているとの事。今年は外来持ちとなり、ますます忙しくなっているが更なる飛躍を期待したい。
中村赳晶先生は、医師7年目の先生であり、初期研修を終えて消化器内科医となって市中病院で臨床経験を重ねる中で、がん治療に興味を持ち化学療法グループへの所属を希望してくれたとの事であり、がんという大きな困難に立ち向かっている患者さんの手助けをしたいと思っているとのことでした。今凝っていることは、週末の時間があるときは妻と料理をして晩酌するようにしているとの事でした。がん患者さんに優しいオンコロジストに成長してくれることを期待しています。
渡辺亮介先生は、専攻医2年目ですが少々面白い経歴の先生です。北大理学部修士課程卒業後、製薬企業でがん領域の研究開発に従事していたことで臨床でもがん診療に携わりたいこととなり我がグループに来てくれました。趣味はマラソン、サッカー、石庭巡りとのことです。オールドルーキーで正直不安も多々あるとのことですが、オンコロジストを目指しがんばって頂きたいと思います。