坂本教授よりご挨拶

7年目を迎えた消化器内科学教室:さらなる飛躍を求めて

本学に赴任して今年で7年目を迎えた。同時期に入学した学部学生はすでに卒業し、初期研修医であった若手は多くが大学院生となり、消化器病専門医等を取得したところである。この7年間に合計80人が当科に入局し、47人が学位を取得している。ここまで順調に来ることができたのも、赴任当初より温かく見守り、支援してくれた同門会の方々、慢性の人員不足の中、教室運営方針に賛同してひたすら頑張ってくれた医局スタッフ、関連病院スタッフのおかげと日々感謝している。

研究活動

化学療法グループは、当院が2018年にがんゲノム医療中核拠点病院に指定される以前から、SCRUM-Japan GI-screen等のがんゲノム研究の基盤をすでに築き、次世代シーケンシング、MSI検査、Liquid Biopsyなど計500検体以上の解析を実施している。共同研究施設としての成果発表も発信しており、今後も当院のがんゲノム中核拠点事業を下支えすると確信している。

内視鏡グループの小野講師は、LCI(Linked Color Imaging)で胃癌リスクの高い腸上皮化生粘膜を識別でき、さらにミンクリア(l-menthol)散布することにより腸上皮化生がより明瞭化することをFirst Priorityとして世界に先駆けて報告しており、今後主導的な立場の一人として多施設研究にも関わっていく予定である。

肝臓グループでは、大学と協力施設で進めている多施設共同研究NORTE Study Groupの活動から、ウイルス肝炎治療に加えて、肝癌に対する分子標的治療の治療効果予測マーカーに関する研究を展開し、今年だけでも多数の論文を発信している。今年度から、大学院を卒業した大原が厚生労働省肝炎対策推進室に出向し、様々な肝炎対策の推進にかかわっている。胆膵グループからは、大学院生を中心に多くの貴重な症例報告がなされ、加えて、胆道癌遺伝子解析研究の報告、道内および全国施設との連携によるEUS/ERCPに関連した当科主導多施設共同研究の実施、ならびに成果の発信がなされている。

その他、2018年には各専門グループから今年、臨床、基礎研究に関する計42本の英文論文を発表している。

2018年主要論文

Journal5Yr IF論文数(原著)
Clinical Gastroenterology and Hepatology7.3561
Gastrointestinal Endoscopy6.3732
Endoscopy6.6291
Analytical Chemistry6.0422
Journal of Gastroenterology5.5617
Clin Transl Gastroenterol4.6211
Scientific Reports4.6091

診療活動

昨年の病院の病棟再編に伴い、消化器内科病棟が、3箇所になっている:12-2(肝臓、化学療法グループ), 12-1(胆膵グループ)、7/2(内視鏡、腸疾患グループ)。それに伴い入院患者も増加し、引き続き消化器内科は病院の主要な稼ぎ頭になっている。一方で常に他病棟の共通病床を使用しているため、患者が複数病棟に分散しスタッフの診療の負担が増えている。なにより一体となるべき消化器内科診療が物理的に分断されることのガバナンス、医療安全管理、入退院管理上のデメリットも現れている。病院執行部には、消化器病診療の理想は外科、内科一体となった総合消化器センター診療であることを一貫して主張している。将来の病院再開発時には是正に期待したい。

新専門医制度

基盤領域である内科専門医制度が2018年度より開始され、今年度2期目の内科専攻医を迎えている。大学を専門研修基幹施設、従来の関連病院を専門研修連携施設として、3年間の内科専門研修を担当する。これまで以上に広く内科疾患を主病名として診療することが要求される。現在実質的には大きな環境の変化はなく、むしろ北海道では大学病院を基幹施設とするプログラムの専攻医が若干増加している傾向がある。一方、2018年に医師法・医療法が改正され、地域への医師適正配置に関して厚生労働大臣(厚労省)が意見をする権限が新しく規定された。それに伴い今年度に本格始動するはずであったサブスペシャルティ研修が「地域医療への悪影響の可能性」を理由に棚上げになってしまっている。消化器領域では、消化器病専門医、肝臓専門医、消化器内視鏡専門医の連動研修が予定されており、すでに予定されたプログラム(カリキュラム)で研修を始めているが、正式な承認には待ったがかかった状態である。何より現在研修を進めている専攻医への不利益や、地域への医師派遣体制に影響が出ることは避けて欲しいと切に願う次第である。

新人

2018年度は14人の新人が入局している。田中秀五先生、志藤茜先生、金子志帆先生、目野晃光先生、横山達也先生、横山大輔先生、白鳥翔也先生、保浦直弘先生、金光雄哉先生、小田総一郎先生、早坂秀平先生、野村朝子先生、石田浩一先生、岸法磨先生、田中秀五先生。2019年度は9月次点で3名の入局者を迎えている。一方で多くの開業・退局者もおり、教室員の総数はなかなか増えない。それぞれの新人の可能性を100%引き出して診療、研究両面で国内外で評価される消化器内科医に育て上げることが我々教室員全員の責務である。

学会

2019年8月に東京で開催された、日本肝臓学会生涯教育講演会の会長をつとめさせていただいた。肝臓の9個の重点領域(ウイルス肝炎(B型、C型、A/E型)肝癌、NASH、肝栄養代謝、薬剤性肝障害)をテーマに9人の第一人者にそれぞれ講演をいただいた。全国から523人の参加者が集まり、当科からも新しく肝臓専門医を取得するために多くの若手が参加してくれた。浅香先生もご参加ありがとうございました。

当番会長を担当する第57回日本肝臓学会総会は再来年、2021年6月17-18日に開催することが決まっている。学会史上初めて札幌で開催される肝臓学会総会であり、さらに本学が主催することも初めてである。学会の参加者は年々増加しており、おそらく3、500人以上の参加者が見込まれる。北海道から肝臓研究を発信する場として歴史に残る会となるよう、これから教室を挙げて準備が始まる。開催に向けて教室、同門会の皆様にはご協力、ご支援をお願いしたい。

昨年に繰り返し言わせていただく。順調に見える消化器内科でも、時間が経ち人が多くなればbasic politeness(常識)を忘れた先生、指導について来られない、あるいは協調性を欠く先生も出てくる。油断と慣れのあとには衰退が待ち構えている。またこれからも多くのtroubled waterが待ちかまえている事は間違いなく、気を引き締めていくことが重要である。目先の結果にとらわれず、教室員の能力を信じ、将来的に国際的に大きく育っていただけるような、大学・関連病院も含めた教室作りに全力を注ぐことが、私の使命である。今後も教室一丸となって、日本に、世界に情報発信する教室となるよう、諸先生の皆様には引き続きご鞭撻を切にお願いする次第である。

北海道大学・大学院医学研究院・消化器内科学教室 坂本直哉