グループ紹介

胆膵グループ
Pancreato Biliary

~胆膵内視鏡による低侵襲・効果的治療の実現~
 胆膵領域疾患はその複雑な特性上,診療科の垣根を越えた総合的な診療が特に重要であり,最善の診断・治療を行うべく,わたしたちは日夜努力と研究を重ねています.特に,治療を安全かつ確実に完遂させるためには,想定されうるイベントやトラブル(特に,膵炎や胆管炎)への十分な予防対策と迅速な対応が肝要であり,グループが一丸となって高い意識と志を持って臨んでいます.

グループメンバー

グループ長

メンバー

  • 医員・大学院生(4) 岸 法磨
    医員・大学院生(4)
    岸 法磨
  • 医員・大学院生(3) 米村 洋輝
    医員・大学院生(3)
    米村 洋輝
  • 医員・大学院生(3) 野澤 俊一郎
    医員・大学院生(3)
    野澤 俊一郎
  • 医員・大学院生(2) 白鳥 翔也
    医員・大学院生(2)
    白鳥 翔也
  • 医員・大学院生(2) 小田 総一郎
    医員・大学院生(2)
    小田 総一郎

臨床分野

 診断困難症例や悪性腫瘍を中心に全ての胆膵良悪性疾患を対象に診療を行っています.超音波内視鏡検査 (年間約300-400例)内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (関連手技との合計年間約400例) や胆道癌の術前には欠かすことのできない内視鏡的胆道ドレナージ (年間約150例)を中心に,黄疸や胆管狭窄,膵管拡張や狭窄の原因診断,胆管癌や膵癌の術前診断に力をいれています.

 また,膵胆道領域の腫瘤や縦隔腫瘍,後腹膜腫瘍や消化管粘膜下腫瘍に対する病理学的診断には欠かすことのできない超音波内視鏡検査下穿刺検査 (EUS-FNA) (年間約150例)は,その技術を発展させて、最近では経乳頭的胆道生検によっても診断困難な胆道疾患例に対しても行うことが可能となり、EUS-FNAにより得られた検体への遺伝子的アプローチも可能である時代になっています.当グループからもすでに膵腫瘍および胆道腫瘍における膵液や胆汁中の遺伝子研究成果を発表しています.

 癌性疼痛に対する超音波内視鏡下神経叢/神経節ブロック (EUS-CPN/CPB),術後膵液瘻や重症膵炎後の感染性膵壊死,経乳頭的アプローチが困難な閉塞性黄疸に対する超音波内視鏡下ドレナージ術等の最先端の超音波内視鏡下治療も施行しています.

 2021年8月からは,自由診療として,膵神経内分泌腫瘍に対する超音波内視鏡ガイド下エタノール注入療法(先進医療B)を行っており,患者さんがご希望される低侵襲治療を実施中しています.

 臨床研究に関しては,当科主導の多施設共同研究である膵癌術前抗癌治療中の最適な金属ステントに関する無作為化試験を主体に,道内多施設共同研究や全国規模の臨床試験への参加も含めて多数行っています.

基礎研究/
橋渡し研究分野

 基礎研究に関しては,胆膵疾患における膵液や胆汁中のDNA解析(永井Dr)やメタボローム解析(岸Dr)を継続し,DNAメチル化や修復遺伝子変異に着目した新たな治療開発に向けた研究(川久保Dr)も継続して行っています.また,薬学研究院(小川美香子教授)や遺伝子病制御研究所(村上正晃教授)とも引き続き連携しながら,膵胆道癌の新たな光線免疫療法開発のための基礎実験(米村Dr)や急性膵炎関連遺伝子に関する前向き観察研究(野澤Dr)もさらに発展させて行っています.世の診療における新たなエビデンスの創出を目指して,質の高い研究の遂行とともに患者さんの利益への貢献を追及していきたいと考えています

現在進行中の臨床研究

当院主導

  • 閉塞性黄疸を有する膵癌患者における術前化学療法/化学放射線療法の際のアンカバードステントに対するパーシャルカバードステントの非劣性を検証する無作為化比較試験
  • 膵炎関連遺伝子一塩基多型と内視鏡的逆行性胆管膵管造影後膵炎発症との関連性および発症メカニズムに関する研究
  • 超音波内視鏡下穿刺吸引生検/細胞診を用いた胆道癌術前のリンパ節転移評価の有用性の検討

他施設主導

  • ApoA2アイソフォームによる膵がん検診の臨床研究実施に向けたフィージビリティ研究:単群・観察研究
  • 家族性膵癌家系または遺伝性腫瘍症候群に対する早期膵癌発見を目指したサーベイランス方法の確立に関する試験
  • 切除不能局所進行膵癌に関する診療実態調査および予後因子の解明:多施設共同前向き観察研究
  • 膵腫瘍に対する超音波内視鏡下穿刺吸引生検後の穿刺経路腫瘍細胞播種の前向き全国調査に関する研究(日本膵臓学会主導)
  • 胆道狭窄と十二指腸狭窄を同時にきたした方の最適な胆道ドレナージと消化管通過障害改善を目指した研究
  • 10mm未満膵嚢胞性病変の多施設前向き研究
  • 慢性膵炎による疼痛に対する内視鏡的治療と外科的治療の前向き追跡調査

現在進行中の基礎研究/橋渡し研究

  • 膵液および胆汁中の cfDNA/ctDNAを用いた 膵胆道病変の診断に関する研究
  • 膵液・胆汁・十二指腸液中のメタボローム解析に基づいた膵胆道疾患の診断に関する研究
  • ヒストン脱メチル化酵素阻害剤による膵管癌に対する新たな腫瘍免疫療法の開発
  • エピジェネティックなDNA修復機構の抑制を介した胆道癌に対する合成致死療法の開発
  • 内視鏡的逆行性胆管造影下胆道鉗子生検検体を用いた胆道癌ゲノム解析の研究
  • 膵癌および胆道癌に対する光免疫療法の基礎的研究
  • ERCP後膵炎における炎症(IL-6)アンプ活性化機構の関連性の検討
  • 胆道癌におけるCD73発現とその進行・予後との関連性に関する研究

 胆膵領域診療はいまだ発展途上にあり,ERCP/EUS関連手技は高いスキルとリスクが隣り合わせであると言えます.診断・治療が困難な状況,症例は多々あることと思います.大学と関連病院,一般病院が連携しながら,そのような苦難を一つ一つ乗り越えていくことが,お互いの発展と患者さんへの利益の還元につながると考えています.

文責:桒谷 将城(2023年7月)