グループ紹介

胆膵グループ
Pancreato Biliary

~胆膵内視鏡による低侵襲・効果的治療の実現~
 胆膵領域疾患はその複雑な特性上,診療科の垣根を越えた総合的な診療が特に重要であり,最善の診断・治療を行うべく,わたしたちは日夜努力と研究を重ねています.特に,治療を安全かつ確実に完遂させるためには,想定されうるイベントやトラブル(特に,膵炎や胆管炎)への十分な予防対策と迅速な対応が肝要であり,グループが一丸となって高い意識と志を持って臨んでいます.

グループメンバー

グループ長

メンバー

  • 医員・大学院生(3) 米村 洋輝
    医員・大学院生(4)
    米村 洋輝
  • 医員・大学院生(3) 野澤 俊一郎
    医員・大学院生(4)
    野澤 俊一郎
  • 医員・大学院生(2) 白鳥 翔也
    医員・大学院生(3)
    白鳥 翔也
  • 医員・大学院生(2) 小田 総一郎
    医員・大学院生(3)
    小田 総一郎

グループ紹介

 2016年4月に桒谷くわたに将城まさきをグループ長とする体制となってから,2024年4月で9年目を迎えました.2018年6月に川久保かわくぼ和道かずみちが米国留学から帰国して助教に復帰し,2022年4月からは,杉浦すぎうらりょうが新たな胆膵グループスタッフ(特任助教)として再び大学に復帰しました.スタッフ3人体制となって,臨床研究と基礎研究の両面に力を注いでいく体制が整い,充実した体制となりました.現在の胆膵グループのメンバーは,桒谷くわたに将城まさき(病院講師),川久保かわくぼ和道かずみち(助教),杉浦すぎうらりょう(特任助教)の3名のスタッフのほか,米村よねむら洋輝ひろき(大学院4年),野澤のざわ俊一郎しゅんいちろう(大学院4年),白鳥しらとり翔也しょうや(大学院3年),小田おだ総一郎そういちろう(大学院3年)を加えた計7名で,岸法磨が大学院を無事に卒業して旅立って1名減となりました.外来診療は,桒谷,川久保,杉浦の3名で行っています.病棟診療はメンバー全員によるチーム医療で行っています.

 また,これまでの胆膵グループからの卒業生が,札幌をはじめ,札幌以外の道内各地(稚内,函館,苫小牧,岩見沢,北見)でも活躍し,大学の胆膵グループと連携しながら広大な北の大地における胆膵疾患診療を担っています.

臨床分野

 全ての胆膵良悪性疾患を対象に診療していますが,大学病院の特性として,診断困難症例や悪性腫瘍を中心に診療を行っております.超音波内視鏡検査 (年間約400例),内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (関連手技との合計年間約400例) や胆道癌の術前には欠かすことのできない内視鏡的胆道ドレナージ (年間約150例)を中心に,黄疸や胆管狭窄,膵管拡張や狭窄の原因診断,胆管癌や膵癌の術前診断に力をいれています.

 また,膵胆道領域の腫瘤や縦隔腫瘍,後腹膜腫瘍や消化管粘膜下腫瘍に対する病理学的診断には欠かすことのできないコンベックス型超音波内視鏡を用いた超音波内視鏡検査下穿刺生検 (EUS-FNA) (年間約150例) も積極的に行っています.最近では経乳頭的胆道生検によっても診断困難な胆道疾患例に対しても行うことが可能となっています.EUS-FNAにより得られた検体からは,穿刺対象となった疾患に対する遺伝学的アプローチも可能である時代になっています.当グループからもすでに膵腫瘍および胆道腫瘍に対する遺伝子研究成果を発表しております.

 癌性疼痛に対する超音波内視鏡下神経叢/神経節ブロック (EUS-CPN/CPB),術後膵液瘻や重症膵炎後の感染性膵壊死,経乳頭的アプローチが困難な閉塞性黄疸に対する超音波内視鏡下ドレナージ術,最近では,膵内分泌腫瘍に対する内視鏡的エタノール局所注入療法(自由診療)といった最先端の超音波内視鏡下治療も施行しています.

研究分野

 臨床研究に関しては,当科主導の多施設共同研究である膵癌術前抗癌治療中の最適な金属ステントに関する無作為化試験を主体に,道内多施設共同研究や全国規模の臨床試験への参加も含めて多数行っています.また,2021年夏以降,膵内分泌腫瘍に対する超音波内視鏡下エタノール局注療法を自由診療として開始しました.基礎研究に関しては,胆膵疾患における膵液や胆汁中のDNA解析(永井Dr)やメタボローム解析(岸Dr)を継続し,DNAメチル化や修復遺伝子変異に着目した新たな治療開発に向けた研究(川久保Dr,小田Dr)も継続して行っています.その他,胆道癌におけるCD73発現と治療効果・予後との関連性についての研究(白鳥Dr)も新たに始まりました.また,薬学研究院(小川美香子教授)や遺伝子病制御研究所(村上正晃教授)とも引き続き連携しながら,膵胆道癌の新たな光線免疫療法開発のための基礎実験(米村Dr)や急性膵炎関連遺伝子に関する前向き観察研究(野澤Dr)もさらに発展させて行っています.世の診療における新たなエビデンスの創出を目指して,質の高い研究の遂行とともに患者さんの利益への貢献を追及していきたいと考えています.

現在進行中の臨床研究

当院主導

  • 閉塞性黄疸を有する膵癌患者における術前化学療法/化学放射線療法の際のアンカバードステントに対するパーシャルカバードステントの非劣性を検証する無作為化比較試験
  • 膵炎関連遺伝子一塩基多型と内視鏡的逆行性胆管膵管造影後膵炎発症との関連性および発症メカニズムに関する研究
  • 超音波内視鏡下穿刺吸引生検/細胞診を用いた胆道癌術前のリンパ節転移評価の有用性の検討

他施設主導

  • 膵神経内分泌腫瘍に対する超音波内視鏡ガイド下エタノール注入療法:多施設共同前向き介入研究(先進医療B)
  • ApoA2アイソフォームによる膵がん検診の臨床研究実施に向けたフィージビリティ研究:単群・観察研究
  • 家族性膵癌家系または遺伝性腫瘍症候群に対する早期膵癌発見を目指したサーベイランス方法の確立に関する試験
  • 10mm未満膵嚢胞性病変の多施設前向き研究
  • 慢性膵炎による疼痛に対する内視鏡的治療と外科的治療の前向き追跡調査
  • 膵癌の新規感受性遺伝子の探索
  • 膵腫瘍に対する超音波内視鏡下穿刺吸引生検後の穿刺経路腫瘍細胞播種の前向き全国調査に関する研究(日本膵臓学会主導)
  • がん遺伝子パネル検査を受けた胆道癌症例に関する前向き観察研究(日本胆道学会主導)
  • 切除不能悪性胆道狭窄及び十二指腸狭窄に対する超音波内視鏡下胆管胃吻合術及び十二指腸ステント留置術の同時施行についての検証的試験
  • 急性膵炎後の被包化壊死に対する超音波内視鏡下ドレナージ後の治療戦略を検討する多施設共同無作為化比較試験

基礎研究/橋渡し研究分野

  • 膵胆道癌に対する光免疫療法の開発研究
  • FNAや胆管生検による微小検体を用いた癌診断に向けた遺伝子研究
  • 膵液・胆汁中DNAおよびメタボローム解析による癌診断研究
  • CT灌流画像を用いたERCP後膵炎発症の早期予測に関する研究
  • 胆道癌患者における腫瘍内/胆汁中のマイクロバイオームと化学療法への抵抗性/予後との関連に関する研究
  • 胆道癌におけるCD73発現とその進行・予後との関連性、およびその生物学的背景メカニズムに関する後方視的/前方視的研究

 胆膵領域診療はいまだ発展途上にあり,ERCP/EUS関連手技は高いスキルとリスクが隣り合わせであると言えます.診断・治療が困難な状況,症例は多々あることと思います.大学と広大な北海道内に広がる関連病院,一般病院が連携しながら,そのような苦難を一つ一つ乗り越えて共に診療を行い,協力して研究体制を維持いくことが,お互いの発展と患者さんへの利益の還元につながると考えています.

文責:桒谷 将城(2024年7月吉日)